相続トラブルの原因はどこにあるのか?
相続問題のトラブルポイントとは?
遺産相続でトラブルとなるポイント(トラブルポイント)が、実は、殆どが同じ所です。
にもかかわらず遺産相続のトラブルがこれだけ多いのは、そのトラブルポイントを回避し、処理していくための、「専門的な知識」が必要となるからなのです。
そこで、そのトラブルポイントを上手く回避し、適切に処理していくことができれば、問題の解決はそう難しいものではなくなります。
それではトラブルポイントとはどこなのか?
大きくわけて3つのポイントと9つのチェックがあります。
トラブルポイント1相続人と相続分の確定
- 相続人とは誰がなるのか?
- 相続人となった自分はどれだけの遺産を相続できるのか?
- 相続人間で相続分の不公平が起こる場合はどのように調整するのか?
トラブルポイント2相続財産の確定
- どこからどこまでが相続財産になるのか?
- 相続財産の評価方法はどうするのか?
- 債務(借金)がある場合はどうなるのか?
トラブルポイント3相続財産の分配方法
- 遺産分割の種類について
- 自分にはどの分け方がよいのか?
- 書面にまとめておく方が良いのか?
トラブルポイント1相続人と相続分の確定
- 相続人とは誰がなるのか?
- 相続人となった自分はどれだけの遺産を相続できるのか?
- 相続人間で相続分の不公平が起こる場合はどのように調整するのか?
相続が発生したが、お亡くなりになられた方が遺言書を作成していなかった場合などは、法律(民法)で定められたルール従って相続財産を分割します。
このような分割の方法を「法定相続」と呼びます。
尚、遺言書がある場合には遺言書の内容が優先されます。
では、具体的に相続の順位や割合はいったいどのようになっているのか?
それは、下記のように定められています。
法定相続の順位
順位 | 法定相続人 |
---|---|
第1順位 | 子供(直系卑属) |
第2順位 | 父,母もしくは祖父母(直系尊属) |
第3順位 | 兄弟姉妹(傍系血族) |
お亡くなられた方の配偶者は常に相続人になると定められています。
お亡くなられた方に子供(孫、曾孫、玄孫)がいない場合には、父母(祖父母、曽祖父母、高祖父母)が相続人となります。
お亡くなられた方に子供(孫、曾孫、玄孫)がなく、父母(祖父母、曽祖父母、高祖父母)共にご存命でない場合は、お亡くなりになられた方の兄弟姉妹が相続人となります。
法定相続の割合
法定相続人 | 割合 |
---|---|
子供と配偶者 | 子供が1/2 配偶者が1/2 |
祖父母と配偶者 | 祖父母(直系尊属)が1/3 配偶者が2/3 |
兄弟姉妹と配偶者 | 兄弟姉妹(傍系血族)が1/4 配偶者が3/4 |
公平を期すために、このような一定のルール(法律)の下で遺産分割が行われます。
相続人を確定するための調査
相続は時に大きな財産を手にすることもあります。
そのため、時には今までその存在を知らなかったり、名前も聞いた事がないような人が相続人だといって現れたりすることや、本来の権利をもたない方が権利主張して現れるといった事も少なくはありません。
そのような事を防ぐためにも、相続人を確定する調査は必ず行わなければなりません。
では、どのようにして調査をおこなうのか?
その手順は以下の通りです。
- お亡くなりになられた方の戸籍を取得します。
これは、お亡くなりになられた方の出生から死亡まで全ての戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍となります。通常はこの段階で両親と配偶者、子供を確認することが出来ます。 - 子供(孫、曾孫、玄孫)がいない場合は、父母(祖父母、曽祖父母、高祖父母)の直系尊属の方が相続人になりますので、必要に応じ戸除籍を取得します。
- 子供がおらず、直系尊属の方も全員亡くなっておられる場合には、兄弟姉妹の戸除籍を取寄せ相続人確定の調査をします。
相続人調査の際によくある事が、相続人の人数が思いのほか多かったり、聞いた事も無いような人の名前が出てきたりする事があります。
上記のように、正確な調査を行わなかった場合、後から相続権を持つ相続人が現れて相続権の回復を請求され、1からやり直しをすることになる場合もあります。
しかも、そのような場合は話がこじれてしまい、調停や訴訟となったりするケースも少なくありません。
また相続人の方々が近しい所にお住まいでしたらまだしも、日本全国各地にお住まいであったり、海外勤務などで日本には住まわれて無い方も時にはいらっしゃいます。
そのような場合、相続人の方々がおこなう、戸籍の収集やお手続の負担は大変なものとなってしまいます。
トラブルポイント2相続財産を確定する
- どこからどこまでが相続財産になるのか?
- 相続財産の評価方法はどうするのか?
- 債務(借金)がある場合はどうなるのか?
相続財産の範囲
遺産や相続財産と呼ばれるものは、お亡くなりになられた方が残された「権利と義務」の2つの事を表します。
つまり、遺産とは預貯金や不動産といった権利のプラスの財産だけではなく、借金や負債などの義務のマイナス財産も含まれているということです。
プラスの財産としては、不動産(土地、建物)不動産上の権利(借地権など)金融資産(預貯金、株式など)動産(自動車、宝石や貴金属、絵画など)になります。
中には特許権や著作権といった権利も含まれます。
マイナスの財産としては、借金(借入金、振出小切手、手形債務など)公租公課(未払いの所得税、住民税など)未払いの医療費などといった未払い費用などが含まれます。
また、受取人指定のある生命保険や、墓地、仏壇といった祭祀に関するもの等は遺産には該当しません。
相続財産の評価方法
相続財産の評価方法というのは、民法上、特に定めておりません。
一般的には、相続が開始された時(財産を保有していた方が亡くなった時点)の価額で計算されることとなります。
しかし、相続財産の評価はその評価の仕方によって相続税の評価額が変わったり、民法と税法で財産の対象とその評価の扱いが異なる場合があるなど、かなり専門的な判断を必要とされます。
財産をどのように相続するか
相続財産がプラスの財産かマイナスの財産かを調査して、その財産を受け継ぐか受け継がないかの選択をしていただきます。
相続の選択は以下の3つとなります
単純承認を選択する
相続財産のすべて(プラスの財産、マイナスの財産共に)を受け継ぐ選択です。
単純承認は特別の手続を必要とはせず、相続が開始した事を知った日から3ヶ月内に相続放棄も限定承認もしなかった場合に単純承認をしたものとみなされます。
相続放棄を選択する
相続財産のすべてを受け継がない選択で、これを相続放棄と呼びます。
マイナスの財産が多いときなどに選択されるものですが、ひとつ注意として相続が開始した事を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申立てをおこなわなければなりません。
限定承認を選択する
プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか分からない場合に、マイナスの財産をプラスの財産の限度で弁済し、マイナスの財産が多かった場合でも、相続人が責任を負わないとするのが限定承認です。清算の結果、プラスの財産が多ければ、相続人に分配されます。
こちらも注意が必要で、限定承認をするには、相続の開始があった事を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に限定承認の申立てをおこなわなければなりません。
なお、相続人が複数いらっしゃる場合(共同相続)には、相続人全員が限定承認の申立てをおこなわなければなりません。
相続人のうち1人でも反対する方がいらっしゃるとおこなう事は出来ません。
限定承認は、非常に合理的な制度ではありますが、手続きの面倒さと相続人全員でおこなわなければならない他、税務上の問題などもあり、現実にはあまり利用されていないようです。
トラブルポイント3相続財産の分配方法
- 遺産分割の種類について
- 自分にはどの分け方がよいのか?
- 書面にまとめておく方が良いのか?
遺産分割の種類
相続財産を分割することを遺産分割と呼びます。
遺産分割と一言でいっても、宝石や絵画などのように簡単に分割できないようなものから、土地や家といったように分割する事によって、その価値が下がってしまうようなものなど様々です。
どのように分割していくのかは相続人同士の話し合い(遺産分割協議)によって決められます。
それでは、どのような分割方法があるのでしょうか?
おもだった遺産分割の種類は下記のようになっています。
指定分割
お亡くなりになられた方が遺言(遺言書)によって示した分割方法です。
遺言(遺言書)があった場合には、こちらが最優先となります。
協議分割
相続人全員で協議をおこない分割する方法です。
相続人全員の参加と同意が必要となり、一部の相続人を除外したり、また相続人調査をおこなわず、誤って相続人を見落としていた場合などは協議自体が無効となるので注意が必要です。
分割の内容に関しては、相続人全員の意見が一致しているのであれば、その決定した内容が有効となります。
現物分割
遺産そのものを現物のまま分割する方法です
ただ、現物分割では、各相続人の相続分を均等に分ける事は難しい場合も多く、取得の格差が大きくなることが多いです。
そういった際には、格差分を金銭で支払うなどして代償をする事が出来ます。
換価分割
遺産を売却するなどして現金化し、その現金を各相続人で分配をするという方法です。
分割することによって、価値の下がってしまう不動産などでは、この方法が多く採り入れられます。
代償分割
遺産を特定の相続人が取得し、その取得した相続人が、他の相続人に対して、相続分相当を現金で支払うとした分割方法です。
こちらも不動産などの分割には多く採り入れられてます。
共有分割
遺産を相続人全員で共有で取得する分割方法です。
主に不動産などを分割する際に採り入れられますが、遺産の利用や売却などは共有者全員の同意が必要になります。
調停や審判による分割
遺産分割の協議がまとまらない場合や、協議自体をすることが出来ない場合などは、家庭裁判所に遺産分割を請求することが出来ます。
家庭裁判所には調停、審判のいずれを申立てても良いのですが、通常は先に調停を申立てることが殆どです。
調停が不成立となった場合には審判へと以降することとなります。
自分にあった分割方法
以上のように、分割方法には色々と種類がございます。
また遺産の種類や数により、更に多様となることがあります。
まずは、皆さまご自身にあった分割方法を検討することが何よりも大切です。
遺産分割協議書の作成
遺産分割は協議によって相続人全員が合意すれば、必ずしも協議内容を書面になとめなければならないものではございません。
しかし、以下の理由により分割協議の成立を証明するものとして、遺産分割協議書が必要となります。
- 相続人の間で後日の紛争を避けるため、合意内容を明確に書面にしておく
- 不動産相続登記を申請する際の原因証書として
- 銀行などの預金の払い戻しや、名義変更のため
- 相続税の申告の際に必要書類として
上記のような理由により、相続が発生した殆どの方が、遺産分割協議書を作成されております。