お手続きの事例
事例1 遺産分割協議の放置
ある男性(Aさん)のお話です。
お父様の死亡(相続)によるための遺産分割協議のご相談で当事務所にお越しになられました。
- 相続対象物件
土地、建物(現在、Aさんがお住い中) - 相続人
本来であれば、お父さまがお亡くなりになられた時点で、A、B、C、Dさんの4名で協力して遺産分割協議をしておけば問題なかったのです。
ただ、お父さまがなくなられた後、3年間放置した結果、突如Dさんがお亡くなりになられ、Dさんの相続人(3人の子G、H、Iさん)の協力が必要となってしまいました。
その中のHさんが遺産分割協議に協力してくれず、お困りになられていました。
度重なる話し合いの上、何とか遺産分割協議を済ます事ができたのですが、お手続が済んだ後にAさんはこうおっしゃってました。
『本当に、沢山嫌な思いをしました。まさか身内同士でこのように揉める事になるとは・・・こんなことになるのなら父が亡くなった直後もっと早くに遺産分割協議を行っておけばよかったです。』と
近年、「相続が『争族』にならないために遺言書を作成しましょう」と言われております。
しかし、遺言による遺産相続が非常に良いと言っても、遺言書を書いている人はごく少数の方であり、ほとんどの場合は遺言書が作成されていない場合が多く、実際の所、遺産分割協議をもって財産の承継者を決めておられる方が多数存在しています。
この、遺産分割協議をした結果を残した書面を『遺産分割協議書』と言います。
遺産分割協議書については、特に法律で様式を定めているわけではありません。
遺産相続が発生し、分割協議が調ったなら、不動産については名義変更=相続登記するのが普通です。
しかし、相続人である配偶者や子どもたちは、遺産分割協議をすることなく、相続財産である不動産の名義を亡くなられた方の名義のままで放置していることも少なくありません。
このような事例は、土地の値段がさほど高くない「郊外」や「地方」においてその割合が高いものと思われます。
では、なぜ遺産分割協議をされないかという理由として、既に相続人が遺産相続をした自宅に住んでいるなどして、その不動産を占有している状態の場合には、基本的に他人から権利を侵害されるとは考えにくいからかもしれません。
このようなときは、あえて時間やお金をかけてまで遺産分割協議書の作成、相続登記をしようとは思われないようです。
例えば、お爺さん名義になっている土地を長男が「口頭による遺産分割協議」を行い、相続しましたが、遺産相続登記をしないうちにその長男が亡くなったようなときは、少々面倒なことになります。
土地の名義変更をするための遺産分割協議書に名を連ねる方(相続人の相続人)が増えてしまうからです。
相続人たる関係者全員が近くに住んでいればまだいいですが、遠方にいる場合や、ほとんど会ったこともない親類等の場合は実印や印鑑証明書をもらう事も非常に難儀になってきます。
電話と手紙で面倒なやりとりをした後に、現地に行ってみれば「気が変わった」などということもあり得ます。
お手続きの事例一覧
- 事例3 認知症の方と遺産分割
- 事例2 未成年者がいる遺産分割
- 事例1 遺産分割協議の放置